国際税務ニュースレター
2016年1月号

今回のテーマ:新興国におけるロイヤルティの損金算入制限

日本の親会社が保有しているソフトウェア、デザイン等の著作物や製造ノウハウ等の無形資産を
海外子会社が使用する場合には、その使用許諾の対価としてロイヤルティが支払われます。

日本の税法上、その無形資産に価値があり、その使用の対価が適正(独立企業間価格)である限り、
支払ロイヤルティの損金性は認められます。

新興国においても、法令上は同様の取扱いがされる場合が多いですが、
税務調査等では損金算入が否認されるケースが散見されるため注意が必要です。

1. 新興国におけるロイヤルティの損金算入制度
(1) タイ、インドネシア、ベトナム、インド
対価性があり、取引価格が独立企業間価格である限り損金算入が可能です。

(2) ブラジル
ロイヤルティの送金および損金算入には、ライセンス契約の
ブラジル特許庁(INPI)への登録が要件となっています。

(3) 中国
原則として、収益との対応が認められ、取引価格が独立企業間価格である限り損金算入が可能ですが、
2015年に新たな関連通達(国家税務総局[2015]16号および国税初[2009]2号改訂版)が発効されました。
この関連通達の中で、損金算入の算定基準として以下のような項目が挙げられています。

①価格の算定根拠の明記
算定根拠が明記された独立企業間価格で取引がされていること
②実体
支払先が実体を伴う事業活動を行っていること
③無形資産価値創出への貢献
 支払先が無形資産の法定所有権を有しているのみでなく、その価値創出に貢献していること

2. 各国の損金算入否認例
(1) 子会社が赤字の場合(中国、インド、インドネシア)
ロイヤルティは利益に貢献する対価であるという前提の下、子会社に利益が生じていない場合には、
ロイヤルティの損金算入が否認される場合があります。
このような取り扱いの背景には、無形資産の本質は、超過収益力の源泉であり、
超過収益力が発現していない無形資産の価値を認めない考え方があります。

(2) 長期間技術提供を受けている場合(中国、インド、インドネシア、タイ)
長期にわたって同じ技術の提供を受けている場合、長期間にわたり技術を使うことにより、
技術ノウハウを内部化することができるため、新たな技術革新がないかぎり、
同額のロイヤルティ-を長期間にわたり支払い続ける意味がないという考え方があります。
技術が陳腐化しており利益に貢献していない、現地にノウハウが十分にあるため技術提供を
受ける必要がない等の理由により、損金算入が否認される場合があります。

(3) 国内法による規制(中国、ブラジル)
国内法上、ロイヤルティの支払いをする場合に契約書の提出またはロイヤルティ料率の登録等が
義務付けられている場合があります。
その登録に際し、法令にはない様々な制限により送金が規制され、損金算入ができない場合があります。

(4) 他者からブランドを購入した場合(インド)
親会社の買収企業が所有していたブランドなど、親会社が直接的にそのブランドを創造
又は価値の向上をさせていない場合には、ブランドから生じる利益に対しての貢献が認められないとして、
ブランド使用料の損金算入が否認される場合があります。

(5) 知的財産権以外に対する支払(インドネシア)
関係当局への登録状況や証明書により、知的財産権等に対するロイヤルティであることが証明できない場合には、
損金算入が否認される可能性があります。

お見逃しなく!
海外子会社からロイヤルティを受け取らない場合には、日本において移転価格税制による課税や
寄附金課税を受ける可能性があるため、現地と日本両方での検討が必要になります。

◆お問い合せ先:日税国際税務フォーラム
TEL:03-3340-4488 FAX:03-3340-6702
Mailboat_kz@nichizei.com

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