外国子会社合算税制の見直しを踏まえた通達改正

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外国子会社合算税制の見直しを踏まえた通達改正

日税国際税務フォーラム

際税務ニュースレター

2018年2月号

今回のテーマ:外国子会社合算税制の見直しを踏まえた通達改正

平成29年度改正後の外国子会社合算税制は、外国関係会社の平成30年4月1日以後開始事業年度から適用されます。国税庁は、適用開始に先立つ平成29年12月に、改正内容を踏まえた新通達を発遣しました。

改正後は、改正前の合算課税の適用除外基準に代わり「経済活動基準」が設けられました。経済活動基準は、「事業基準」「実体基準」「管理支配基準」、及び外国子会社の業種によって「所在地国基準」または「非関連者基準」から構成され、いずれかを満たさなければ対象外国関係会社と判定されます。

新たな「実体基準」の解釈

実体基準の判定における、外国関係会社がその主たる事業に係る活動を行うために必要と認められる事務所等(事務所、店舗、工場その他の固定施設)を有していることに関しては、次のことが明らかに示されました(新措通66の6-6)。

(1)    外国関係会社の有する固定施設が、主たる事業を行うに必要と認められる事務所等に該当するか否かは、外国関係会社の主たる事業の業種や業績や業態、主たる事業に係る活動の内容等を踏まえて判定すること。ただし、その外国関係会社の有する固定施設が、主たる事業に係る活動を行うために使用されるものでない場合には、主たる事業を行うに必要と認められる事務所等には該当しない

(2)    事務所等を賃借により使用している場合であっても、事務所等を有していることに含まれること

例えば、主たる事業が不動産賃貸事業の場合、契約締結等の事業活動を行う事務所等を有していなければ、上記(1)により実体基準を満たせないものと解されます。

 

「管理支配基準」の解釈通達の分割外

現行通達は、管理支配基準の充足性を、株主総会の開催場所、会計帳簿の作成場所等を総合勘案して行うとしています(措通66の6-16)。新通達は、管理支配基準の充足性に関する要件を二つに整理し、それぞれの解釈を示しました。

①自ら事業の管理、支配等を行っていることの意義(新措通66の6-7)

管理支配基準を満たすには、外国関係会社の本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っている必要があります。外国関係会社がその事業の管理等を自ら行っているかどうかに関しては、外国関係会社がその外国関係会社の事業計画の策定等を行い、その事業計画等に従い裁量をもって事業を執行することであり、通達で示した次の(1)から(3)の事実があるとしてもそのことだけでこの要件を満たさないことにはならないとしています。

(1)    外国関係会社の役員がその外国関係会社以外の法人の役員又は使用人を兼務していること

(2)    外国関係会社の事業計画の策定等に当たり、親会社等と協議し、その意見を求めていること

(3)    事業計画等に基づき、外国関係会社の業務の一部を委託していること

 

(1)については、常勤役員が存在しないことを理由に管理支配基準を満たせないとした国税の主張が排斥された訴訟(東京地裁平24.10.11:レンタルオフィス事件)が影響した可能性があると思われます。

②事業の管理、支配等を本店所在地国において行っていることの判定(新措通66の6-8)

その事業の管理、支配及び運営を本店所在地国において行っているかどうかの判定は、改正前と同様で、外国関係会社の株主総会および取締役会等の開催、事業計画の策定等、役員等の職務執行、会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所並びにその他の状況を総合的に勘案の上行うとしています。

 

お見逃しなく!

経済活動基準の充足性に関して、これまで確定申告書への書面添付義務が設けられていましたが、改正後は、書面添付要件が廃止された一方で、国税当局の求めに応じて、定められた期限までに経済活動基準を満たすことを明らかにする書類等の提出がないときは、経済活動基準を満たさないものと推定されることとなりました(措法66の6④第二文、66の6③)。

国税庁は、「平成29年度改正外国子会社合算税制に係るQ&A」を2018年1月31日に公表し、①特定外国関係会社の判定、②対象外国関係の判定における経済活動基準、③部分対象外国関係会社の部分合算課税の対象範囲についての疑問点や典型的な例を解説しています。