BEPS行動計画7を踏まえたOECDモデル租税条約改正案

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2018年1月号

今回のテーマ: BEPS行動計画7を踏まえたOECDモデル租税条約改正案

OECD(経済協力開発機構)は、2015年10月5日にBEPS(Base Erosion and Profit Shifting)行動計画7「恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止」を勧告しました。この勧告を踏まえ、代理人PEの定義、PEの例外規定についての改正案が盛り込まれました。今回は、改正案の具体的な内容について紹介します。

BEPS行動計画7 恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止

(Preventing the Artificial Avoidance of Permanent Establishment Status)

恒久的施設(PE)とは、事業を行う一定の場所(支店等)をいい、例えば外国法人が日本国内で事業を行う場合、日本国内にPEがなければその外国法人の事業利得に対する日本での課税はすることができないものとされてきました(PEなければ課税なし)。

PEには、企業のために相手国内で行動する者(代理人PE)が含まれるとともに、準備的・補助的活動の場所はPEに該当しないとされています。そのため、進出先国で代理人PEの要件に該当しない問屋(コミッショネア)契約や、PE認定されない活動のみを行うこと等によるPE認定の人為的回避を防止するため、BEPS行動計画7では、OECDモデル租税条約のPEの定義の修正が勧告されました。

 

現行法における代理人PEの定義およびPEの例外

(1)いわゆる代理人PEの定義

現行法において、非居住者が国内に置く自己のために契約を締結する権限のある者その他これに準ずる者は、代理人PEとされています(法2条12の19)。

具体的には、非居住者のためにその事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、常にその権限を行使する者や在庫商品を保有しその出入庫管理を代理で行う者、あるいは注文を受けるための代理人等が該当することとされています。(法令4の4)

例えば、A国に本店を有する企業が日本国内に代理人を置き、その企業の名で製品の販売契約を締結する場合には日本国内に代理人PEを有することになりますが、日本国内の受託者と問屋(コミッショネア)契約を締結し、日本国内においてその企業の製品を販売した場合には、その製品は受託者の名において販売されるため、その企業は日本国内にPEを有さないこととなり、法人税を納める必要はありません。

 

(2)PEの例外

現行法では、次のいずれかに該当する場所は、PEに該当しないという例外規定が設けられています(法令4の4②)。

①外国法人が資産を購入する業務のみのために使用する一定の場所

②外国法人が資産を保管するためにのみ使用する一定の場所

③外国法人が広告、宣伝、情報の提供、市場調査、基礎的研究その他その事業の遂行にとつて補助的な機能を有する事業上の活動を行うためにのみ使用する一定の場所

そのため、A国に本店を有する企業が、日本国内に支店を設けて製品を販売する場合には日本国内にPEを有することとなりますが、日本国内に倉庫を設けて、そこで製品の保管・引渡しのみを行う場合には、その外国法人が資産を保管するためにのみ使用する一定の場所として、その倉庫が相当規模を有し、企業の製品販売事業の本質的な部分を構成するものであったとしてもPEの例外に該当し、日本国内にPEを有しないこととなります。

 

平成30年度税制改正の大綱における改正事項の内容

BEPS行動計画7の最終報告書の勧告に基づき、平成30年度税制改正の大綱に、次の内容の恒久的施設関連規定の見直しが明記されました。

(1)いわゆる代理人PEの定義

①代理人PEの範囲に国内において非居住者等のために事業に関して反復して契約を締結し、又は一定の契約の締結のために反復して主要な役割を果たす者で、その契約がその非居住者等の資産の所有権の移転等に関する契約である場合をその者を代理人PEに加えること

②独立代理人の範囲から、専ら又は主として一又は二以上の自己と密接に関連する者を除外すること

 

(2)PEの例外

物品等の保管・展示・引渡しや購入のみを行う場所等はPEに含まれないことに変わりはありませんが、その場所等における活動が準備的又は補助的な性格のものである場合に限るとされました。現行法では物品等の購入・保管のみに使用される場所等に該当した時点でPEの範囲から除外されていますが、今後は場所の用途のみでなく、その場所で行われる活動の実態によりPEに該当するかどうかが判断されることになると思われます。

 

 

お見逃しなく!

2017年版OECDモデル租税条約改正案にも、BEPS行動計画7の勧告に基づくPEの範囲の改定が盛り込まれており、平成29年1月1日以後開始事業年度から適用が開始されている対チリ条約には、同改正案と大綱の見直しを踏まえたPEの考え方が、既に盛り込まれています。PEの定義は租税条約が国内法に優先されると解されてきましたが、大綱には国内法上のPEと租税条約上のPEの定義が異なる場合には、租税条約上のPEを国内法上のPEとすることが明記されましたので、今後の租税条約の改正動向についても注意が必要となります。

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