日税国際税務フォーラム

国際税務ュースレター

2017年12月号

今回のテーマ:タックスヘイブン対策税制におけるキャピタル・ゲイン課税の見直し

タックスヘイブン対策税制については、平成29年度税制改正によって抜本的な見直しが行われました。しかし、積み残された課題があるとして、平成30年度税制改正に向けて経済産業省及び経団連から、改正要望が出されています。その要望は日本企業が買収した多国籍企業グループに属する外国関係会社で発生するキャピタル・ゲインに対する課税の見直しを求めるものです。

 

税制改正要望が出された背景

近年では、日本企業による外国法人の合併・買収は増加の一途を辿っており、その金額は2016年度において過去最高を記録しています。買収した外国法人が傘下に子会社・孫会社を有している場合には、資本関係を整理するため、傘下の外国法人株式を売却することが考えられます。経団連は、平成30年度税制改正の提言において、売却時に発生する外国法人株式のキャピタル・ゲインが、もともと日本企業グループ外にあった外国法人株式の含み益に基因するものであり、日本の税源を侵食するものではなく、一律に合算課税の対象とすることは不合理であると説明しています。

 

現行の制度における取扱い

例えば、外国関係会社が、買収した外国法人(以下、「A社」という。)の株式を売却し、非課税のキャピタル・ゲインが生じた場合、タックスヘイブン対策税制によって、買収した日本企業において、次のいずれかの方法によりキャピタル・ゲインの合算課税を受ける可能性があります。

・1)会社単位の合算課税

A社株式の売却により非課税のキャピタル・ゲインが生じた場合には、売り手である外国関係会社の租税負担割合を引き下げることになり、当該外国関係会社の経済活動基準やその他の要件の充足の状況によっては、対象外国関係会社(措法66の6②三)または特定外国関係会社(措法66の6②二)に該当し、会社単位の合算課税の適用を受ける可能性があります。

・2)受動的所得の部分合算課税

A社株式の保有法人がペーパーカンパニーではなく、平成29年改正で定められた経済活動基準をすべて満たす実態のある企業であったとしても、キャピタル・ゲインのような受動的所得は、改正前と同様に部分合算課税の対象となります(措法66の6⑥)。ただし、持株割合が25%以上の株式の譲渡損益はその範囲から除かれているため(措法66の6⑥四)、グループ内企業の株式に係るキャピタル・ゲインが、部分合算課税の対象となる場合は限定的です。

改正された場合の影響

外国法人株式のキャピタル・ゲインの金額は時として多額となりますので、改正によって、日本企業の海外での健全な事業活動における課税リスクを低減し、海外展開の推進及び国際競争力の向上が図られるものと考えられます。

 

 

お見逃しなく!

税制改正の具体的内容は、税制調査会での審議等を経て、税制改正大綱として発表されます。税制改正要望が大綱に採り入れられるとは限りませんので、日本企業は、今後の買収・合併前にあたっては、税務DD(デュー・ディリジェンス)で課税リスクを認識しておく必要があります。