日税国際税務フォーラム

国際税務ニュースレター

2017年9月号 

今回のテーマ: イギリス国内で適用される税務戦略開示義務

イギリスに所在する多国籍企業等に対して、同国における税務戦略(タックスプランニングや自社の税務リスクへの対応方針等)をインターネットで公表することを義務付ける財政法案が、2016年9月に発効しました。対象は、イギリスに所在するパートナーシップや日本法人の現地子会社のうち、一定の要件を満たす法人です。今回は、イギリス政府が2016年6月に公表した情報を基に、開示義務の概要を紹介します。

 

適用対象者

普通法人、パートナーシップ、グループ企業、外国法人のイギリス子会社のうち、原則として、前事業年度の①売上が2億ポンド(約28億円)以上又は②資産総額が20億ポンド(約280億円)以上の者です。これらの要件を満たさない、イギリス国内で小規模な事業(含支店)しか有さない日本の上場企業等であっても全世界の総売上が7.5億ユーロ(約1,000億円)を超え、BEPS行動計画における国別報告書の提出義務がある者については、適用対象となるため注意が必要です。ただし、オープンエンド型の投資法人・投資信託会社は適用対象にはなりません。

 

開示すべき内容

その法人が適用する税制の内容を具体的に説明する必要があります。実際の税制適用額や納税額等を開示する必要はありません。多国籍企業の場合、イギリスに関係性のある税務戦略をすべて公表する必要があります。開示すべき内容として公表されている税務戦略には次のようなものがあります。

税務リスク
の管理体制
適用法人の事業規模・法人特有の問題・ビジネス環境の変化に関連する税務リスク全般に対する適用法人の対応策及び当該リスクに対する社内のガバナンス体制・取締役の関与度合を説明した情報。
税務戦略の方針 外部の税務アドバイザーを使用する場合にはその理由、適用法人が税務戦略を立案する理由とその必要性の説明。

※多国籍企業の子会社の場合、イギリス国内の税務戦略方針を開示する必要があります。

適用法人が抱える税務リスク 現時点で想定している税務リスクに対応できる社内のガバナンス体制を構築しているか否か。もし構築している場合には、社内のガバナンス体制と株主の関係性に関する説明。

ペナルティ

税務戦略を正しくかつ期限内に開示しない者に対しては、まず開示期限の日から30日以内の改善要求通知が送付されます。また、開示期限の翌日から次の区分に従いペナルティが発生します。

開示期限の日後、最初の6か月間 7,500ポンド
6か月後から12ヶ月未満 上記罰金に加え最大で7,500ポンド
12ヶ月以上 上記罰金に加え、1か月ごとに7,500ポンド

※多国籍企業の場合、本社が罰金の納付義務を負います。

 

お見逃しなく!

最初の開示期限は、2016年9月の本律施行後、最初の事業年度終了の日となります。初回の開示以後は直前に開示した日から15ヶ月以内に毎年情報を更新しなければなりません。