帰属主義の導入が内国法人の海外支店に与えるインパクト

日税国際税務フォーラム

国際税務ニュースレター

2016年6月号

今回のテーマ:帰属主義の導入が内国法人の海外支店に与えるインパクト

平成26年度税制改正により、平成28年4月1日以後開始事業年度からは、外国法人に対する国際課税原則が総合主義から帰属主義へ変更されました。改正後は、恒久的施設帰属所得(PE帰属所得:法法138一)が、国内源泉所得の一つに位置づけられ、移転価格課税と同様の独立企業原則により、PE帰属所得を算定することになりました(措法66の4の3)。

1       内国法人の外国税額控除

外国税額控除制度により、内国法人が外国で課された外国法人税の額は日本の法人税の額から控除されます(法法69)。

改正前は、内国法人の国内源泉所得以外の所得を国外所得として外国税額控除限度額を算出することとされていましたが、改正後は、国外PE 帰属所得とそれ以外の国外源泉所得を独自に計算して(法法69④)、その合計額を国外所得金額として控除限度額を計算することに改められました。

 

2       国外PE帰属所得に係る外部取引・内部取引の文書化

改正後は、外国法人のPE帰属所得を、独立企業原則に基づいて算定する必要があるため、PEに帰属すべき外部取引や本店等との内部取引について、一定の書類を作成することが求められましたが(法法146の2①②)、外国税額控除の適用を受ける内国法人も、その国外PEに帰属する外部取引や内部取引について、国内にPEを有する外国法人と同様の文書化が義務付けられました(法法69⑲⑳)。

具体的に、外部取引については、①国外PEに帰属する外部取引の内容、その外部取引において②使用した資産の明細並びに負債の明細、③PEと本店が果たす機能とその機能に関連するリスク、④外部取引で果たした機能に関連する部門並びにその部門の業務の内容を、内部取引については、①本店等との内部取引の事実(資産の移転、役務の提供その他の事実を記載した注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類)、本店とPEとの内部取引において②使用した資産の明細並びに負債の明細、③PEと本店が果たす機能並びにその機能に関連するリスク、④内部取引で果たした機能に関連する部門並びにその部門の業務の内容を記載した書類、⑤内部取引に関連する事実が生じたことを証する書類等の作成が必要となります(法規30の2、30の3)。

 

3       海外支店にかかる事業税の調整

事業税の課税対象となる事業は、国内で行われる事業に限られるため、国外PE帰属所得については、事業税が免除されますので国外PE帰属所得を所得割の課税標準から控除する調整が必要となります。

この国外PE帰属所得は、法人税法に規定するものと同範囲とされていますので、法人税法の改正の影響が、事業税の課税標準の計算にも及ぶことになります。

 

お見逃しなく!

本店と支店の内部取引は、両者に法的な権利・義務を生じさせる契約ではなく、次のように法人税法上定義される一定の事実にすぎないため、契約書等の作成対象ではありませんが、帰属主義の下では損益が生ずるものとして本文で述べた文書化が義務付けられました。

内部取引とは、外国法人の恒久的施設と本店等との間で行われた資産の移転、役務の提供その他の事実で、独立の事業者の間で同様の事実があったとしたならば、これらの事業者の間で、資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引が行われたと認められるものをいうとされています(法法69⑥)。

ただし、資金の借入れに係る債務の保証等の特定の内部取引については、独立事業者間で取引が行われたと認められるものであっても内部取引とはされません(同項かっこ書、法令145の14)。

さらに、内国法人の国外PEが、内部取引から所得を生ずる旨を定める租税条約以外の租税条約の相手国等に所在するときには、内部利子、内部使用料等は内部取引とはされません(法法69⑧、法令145の十五)。

なお、当期の販売費・一般管理費その他の費用のうち国内業務と国外業務の双方に関連して生じた共通費用は、国外所得金額計算上損金の額として配分する必要がありますが(法令141の3⑥)、この配分の基礎となる事項を記載した書類等についても文書化が必要です(法法141の3⑦、法規28の5)。

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