日税国際税務フォーラム

国際税務ニュースレター

2015年8月号

今回のテーマ:クロスボーダー型現物出資の適格性判定

平成26年9月12日、大阪国税局は大手製薬会社の塩野義製薬に対し、塩野義製薬の100%子会社である英国子会社に対して行ったクロスボーダー型現物出資が税制適格要件を満たさないものとして更正処分を行いました。本件は当該現物出資の税制適格要件の充足性について税務当局へ事前照会をしていたこと、また、その更正所得金額が405億円と巨額であったことから注目されました。

クロスボーダー型現物出資を行う場合には、一般的な税制適格要件のほか、現物出資資産等が「国内にある資産または負債」に該当しないことの要件が求められるため留意が必要です。

1       クロスボーダー型現物出資の税制適格要件

塩野義製薬とその英国子会社のように100%支配関係のある企業グループ内で行われる現物出資に係る税制適格要件は以下のとおりです。③の要件がクロスボーダー型現物出資のみ求められる要件です。

  • 現物出資法人に被現物出資法人の株式のみが交付されること(金銭等不交付要件)
  • 現物出資後において、現物出資法人と被現物出資法人との間に完全支配関係が継続すると見込まれていること(株式継続保有要件)
  • 外国法人に対する国内にある資産(発行済株式総数の25%以上を有する外国法人の株式を除く)または負債の移転に該当しないこと(国外資産/負債要件)

 

2       「国内にある事業所に属する資産または負債」の意義

国内にある不動産等、鉱業権、採石権その他国内にある事業所に属する資産または負債をいいます。

また、国内にある事業所に属するか否かの判定は、原則として、当該資産または負債が国内または国外の事業所のいずれの事業所の帳簿に記載されているかにより判定するものとされています。ただし、国外にある事業所の帳簿に記載されている場合であっても、実質的に国内にある事業所において経常的な管理が行われている場合には、国内にある事業所に属するものと判定されることに留意が必要です。

 

3       本件現物出資に係る現物出資資産とその適格性判定

本件現物出資資産は、塩野義製薬が保有するケイマンのパートナーシップ法等に基づき設立されたF社(日本法上の任意組合に相当)の出資持分であり、また、F社はその事業活動より米国に恒久的施設を有し、F社の各資産および負債は当該恒久的施設を通じて有しているとの認識のもと事前照会を行い、国税当局より本件は国外資産による現物出資に該当し、税制適格要件を満たすとの回答を得ていました。

しかし、後の税務調査において、以下の理由より、F社の出資持分は「国内にある事業所に属する資産」に該当することから税制適格要件を満たさないものと判断され、更正処分がなされました1

  • 塩野義製薬の本社が管理する有価証券台帳にF社の出資持分が記帳されていること。
  • 塩野義製薬が主張する米国の恒久的施設の根拠となる米国の拠点は、登記代行サービスを行う会社が存在するのみであり、独自の活動拠点となる事務所を有している事実は認められないこと。
  • F社の出資持分に係る意思決定が国内の事業所で行われていたこと、また、出資持分に表象される資産の管理および記帳が国内で行われていたこと。

 

お見逃しなく!

  • 外国法人が内国法人に対して現物出資を行う場合の適格性判定についても一定の要件があります。
  • 内国法人が有するタックスヘイブン国に所在する外国子法人の株式を、タックスヘイブン国に所在する外国親法人等に対して移転する現物出資については、租税回避防止の観点から、他の適格現物出資の要件を充足する場合であっても、例外的に適格現物出資に該当しないこととされます。

1「異議決定紹介」 ,『週間T&A master』2015年5月4日号(第593号), P35-38, 株式会社ロータス21.