2015年7月号

拝啓 社長殿

日税国際税務フォーラム

今回のテーマ:IPO審査の厳格化

2015年3月31日付けで日本取引所グループが、新規株式公開(IPO)直後に業績の下方修正をする例や不適切な会計処理が明るみにでるなどにより、市場での不信を招いている問題を受けて緊急の対応策を打ち出してから約3ヶ月が経過しました。

1       活況するIPO市場

2014年のIPO市場は、新規上場会社数が5年連続で増加し、80社(東京プロマーケット3社を含む)でした。2015年も5月末までの新規上場会社数は33社と前年同期に対して14社も増加しています。日経平均株価も金融緩和を背景にした投資資金の流入と、堅調な企業業績の回復等の影響もあり、2015年4月には15年ぶりとなる2万円台を回復するなど堅調な推移を示しています。このため、個人投資家のIPO市場への関心の高さも益々増してきています。

2       IPO審査の厳格化

一方で昨年以降、新規上場後に不適切な会計処理が発覚するケースや上場して直ぐに大幅な業績の下方修正を行う会社がでるなど、活況を呈してきているIPO市場に水を差しかねないような事例も出始めてきております。市場では、今後IPO銘柄が「玉石混交」となるのではという意見もでてきています。

このような流れを受けて日本取引所グループは、いち早く今後の対応策(※1)を打ち出すとともに、日本証券業協会と日本公認会計士協会に対して新規公開の品質向上に向けた対応を要請しています。

証券会社に対しては、引受審査に際しての経営者の法令遵守に対する意識や、利益計画の策定根拠の妥当性などについて厳正な審査を行うよう求めています。

他方、監査法人に対しては、経営者による不適切な取引への対応の実効性の確保のために適切な監査の実施や不正リスクへの適切な対応をとるとともに、監査実務の点検や実効性の確保に取り組むよう要請しています。

日本取引所グループの新規公開の品質向上に向けた対応策(※1)
1. 新規公開会社の経営者による不適切な取引への対応

Ø  経営者の不適切な取引について、上場審査を強化

Ø  上場申請会社の経営者・社外役員等に対して、不適切な取引防止のための啓発セミナーを実施

2. 上場直後の業績予想の大幅な修正への対応

Ø  上場時に公表される業績予想について、前提条件やその根拠の適切な開示を要請(上場直後に業績予想の修正の修正開示を行う場合には、それらに関する特に丁寧な説明を要求)

3. 上場時期の集中への対応

Ø  上場予定時期について東証における集計及び周知を通じて全体日程を共有し、集中緩和を要請

 

お見逃しなく!

これらの対応策等を受けて、今後市場では業績予想が控え目、保守的なものになるのではという見方や年末集中緩和の影響等でIPO社数自体影響を受けるのではという見方もあります。

一方で、政府の成長戦略の一環として新規企業へのリスクマネー供給促進という点でのIPO市場の活性化が無意味になってしまいかねないという危惧のもと、早めに手を打ったという市場の評価もあります。IPOを目指す企業のうち、最も決算期の多い3月決算会社では、6月の株主総会を終えてIPOが本格化していくことになり、今後のIPO市場の動向に注目が集まっています